転職を考える

勤務していた地区を管轄するエリアマネージャーが、人事異動で変わった。
その名前を見た瞬間、背筋が凍り付いた。

その名前は、僕が新入社員のときのエリアマネージャーだった。
僕はこの人と何度も衝突した。
社会人としても、管理職としても、一個人としても、どこをどうとっても好きになれない人物だった。
散々嫌な目に遭わされたので、心底嫌っていた。

二度と一緒に仕事をすることは絶対に無いと思っていた。

なのに、である。
これが勤め人の宿命。
親と上司は選べないのだ。

今まで、どんなことがあっても辞めると言う選択肢が浮かばなかったのだが、この時初めて、「会社を辞めよう。」と思った。
それほどの極度のストレスを全身で感じたのだ。
この人の下では働けない。

だが、辞めようにも次の就職先のあてがない。
この会社での接客販売の経験しかない。
とても転職出来るように思えなかった。

なので、資格をとろうと考えた。
大学では法学部を卒業したということで、法律系の資格からチョイスすることにした。
全てが安直かつ甘ちゃんな発想だったが、当時は真剣だった。
法律系といってもいくつか資格があるのだが、合格のしやすさで「行政書士」を選んだ。
別にそれがやりたい仕事ではなかったが、とにかく一刻も早く会社を辞めなければならなかった。
実際に、この人事が発表になった瞬間に辞表を出した先輩も居たくらいだ。

だが、運命は僕に過酷ないたずらをしてくる。
僕が受験する前年まではずっと合格率がよかったのに、僕が受験する年から出題傾向ががらりと変わり、非常に高難度の資格になってしまったのだ。
結構本気で勉強を頑張ったのだが、あと一問正解が及ばず、まさかの不合格という結果が突きつけられる。

それでも転職の意志は揺るがず、再度受験勉強に励んだ。
血のにじむような努力も実らず、悲しい事に不合格をあと三回重ねる事になる。
なんと4年も猛勉強したにも関わらず、行政書士になることは叶わなかったのだ。

これは僕にとって、かなりの挫折だった。
資格が取れなければ辞められない。
出口が見えないトンネルに入り込んだまま、何年も時が過ぎていった。

転職だ