強制退院

一応、意識は取り戻した。
身体も動かせるようになった。

が、まともに生活出来るような状態からはほど遠かった。

何日目かに、会社の直属の上司と人事部長がお見舞いに来た。
意識が朦朧としているので、何がなんだかわからなかったが、とにかくよそよそしかったというのがかすかに記憶に残っている。
彼らを恨むエネルギーなど残っていなかった。

ベッドの中は僕にとって安心していられる場所だった。
誰にも邪魔されない、好きなだけ寝ていられる、安心安全空間。
ところが入院5日目に、僕は退院勧告を告げられた。

「過労は病気ではないので、自宅療養して下さい。」
とのこと。

この病院は何を言っているのだろう?

不思議で仕方なかったが、どこかが病気な訳ではないのは確かなので、まだフラフラだったが、なかば強制的に退院した。

そして、そのあと分かったことだが、当時の僕が加入していた生命保険は、入院6日目からを保障する契約となっていたのだ。
つまり、この入院は保険が降りなかったのだ。

不条理にはさらなる不条理が重なるものだ。

この世の無情をいやというほど感じながら、入院していた病院をあとにした。

僕は自分の居場所がどこだか分からなくなっていた。

強制退院