カウンセリング

休職の手続きをするには、医者の診断書が必要だった。
かといって、以前に通っていた大学病院に行くことは考えられなかった。

僕には社内で一緒に仕事をさせてもらっていた尊敬する先輩が居た。
その人は社内でもずば抜けた切れ者で、とても有能だったのだが、僕と同じように鬱病を患い、休職と復職を繰り返したのちに、退社を余儀なくされた人だった。

その先輩に、「薬を出さない精神科医」を紹介してもらったので、そこに行ってみることにした。

綺麗な大学病院と違い、古民家を改築した古ぼけた診療所だった。

大学病院と異なり、先生の行ったことは「診察」ではなく「カウンセリング」だった。

数年前に断薬して以来、僕は自分が鬱病を克服したとばかり思っていたが、それは僕が自分に対して思考的に働きかけていただけで、実情は散散たるありさまだった。

早い話、マインドコントロールにかかっているようなもの。
現状をありのままに認識出来なくなっていた。

それは、ありのままに見えてしまえば、仕事はおろか生活も出来なくなるからだった。

正直、診断書をもらうためだけのために月一回通っていたわけだが、先生とのカウンセリングの時間は、ガチガチに洗脳されていた僕に、ゆっくりとありのままの現実を教えてくれるための時間となった。

ここ数年の仕事でのこと。
プライベートでのこと。
誰にも話せなかったことも、先生には話すことが出来た。

先生は、僕の問題の解決をしようとしなかった。
ただただ僕の話を聞いていた。
そして、それに基づいて、僕の自覚出来ていない現状をわかりやすく伝えてくれた。

心理学的アプローチ、および傾聴による感情の吐露。

このプロセスは1年半続いた。

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