人間不信

二度目のバランスチェックから、僕は彼女の指導を受けることとなった。

その時の僕には、とにかく休む必要があった。しかし、実家にいては休んでいても見えない圧を感じ、実際には心が落ち着くことはなかった。
その当時の僕にはそれすら認識できていなかったのだが。

その状況で健康(精神の安定)を取り戻すのは難しいということで、彼女は僕に対し、誰からも干渉されない時間と空間を作るため家を出ることを提案してきた。親も僕が家を出ることを望んでいた。
とは言え、多額の借金を親に肩代わりしてもらったばかりで、休職中の身の僕には、敷金・礼金を用意することもままならない状態だった。
そんなことは不可能だと主張したが、なんと、初期費用は全額彼女が出してくれた。
正直、どうやって引っ越しをしたかもよく覚えていない。
何もかも失っていた僕は、療養所に入るようにその場に逃げ込んだ。
引っ越しの荷物は、一通りの服とステレオくらい。
ほとんど身一つでの引っ越しだった。

確かに、新居に移り住んで、誰からの干渉も受けない生活環境は、僕に安定をもたらした。
しかし、移り住んでしばらくして落ち着いてきたころに、僕はある疑念を持った。
こんな僕にここまでしてくれるなんて、いったいどういうことだろう。
この行為には何か裏があるのではないか。
僕はまた利用されているのではないか。
彼女には返そうと思っても返しきれないほどの温情をもらっているのである。
感謝して当然である。
なのに、この時の僕は、極度の人間不信に陥っていた。
ついこの間まで戦場にいたのである。
裏切りなど日常茶飯事だった。
僕は誰も信じられなくなっていた。
人の温情を素直に受け取れなくなっていた。

「俺を騙す気だろう!?」
疑念が溜まりに溜まった僕はそう言いがかりをつけて彼女に喰ってかかった。

空虚な部屋