自己啓発セミナーの罠

旧体験の中でも書いたように、以前、高額の自己啓発セミナーに参加したことがある。しかし、そこで僕は人生を変えることが出来なかった。当時は何故だか皆目見当もつかなかったが、現在はその理由がよくわかる。

自己啓発セミナーは非日常であり、夢の世界なのだ。
確かにセミナー期間中は熱狂的な高揚感を味わうことが出来る。参加前の弱気だった自分はいつしか世界を変える力さえあるのではないかと思えてくるほどだ。セミナーでは「楽しい」を強烈に感じさせるイベントが数多く用意されている。セミナー期間中の脳は次から次へと繰り出される刺激に興奮しっぱなしである。これはまるで麻薬と同じようなものである。

大体、こういった自己啓発セミナーではネガティブな要素を徹底的に否定し、ポジティブのみを繰り返し強化していくものだ。だが、それはネガティブな感情に徹底的に蓋をして感じさせなくするだけ。ポジティブな感情だけを感じさせるように仕向けるのだが、これははっきり言ってネガティブを更に強化する結果になる。全くもって自分を肯定したことにはならないのだ。むしろそれは、今までよりも苛烈な自己否定なのだということに、気づかないのだ。

実際に、自己啓発セミナーで得た高揚感や至福感は、会場を後にした瞬間から加速度的に醒めていった。家に辿り着いた頃には、影も形もない。だが、記憶には高揚感がしっかりと刷り込まれており、またセミナーに参加してその気持ちを味わいたいとさえ思えてくる。

自己啓発セミナーは、まさに非現実世界でのエンターテインメントであって、ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンと何ら変わるところが無い。

アトラクションでの体験が日常に現れるとは誰も思わないだろう。それは夢の国だから味わえる体験なのだ。あれは夢を見る場所なのだ。現実世界に帰れば夢から醒める。そういうものなのだ。

そういった自己啓発セミナーと違い、人生を変える為の行動を現実世界で実際に行うと、その差は際立つ。

実際の行動は地味で苦しい。
行動の度に、今まで逃げてきた現実に直面することばかりである。
現実世界での行動には結果と感情が常に伴う。ネガティブもポジティブも全て起きる。そしてその全ての感情を否定せずに真っ正面から味わい切るのだ。
ここにはエンターテインメント性は皆無である。愚直にひたすら前進するだけである。楽しくない。全くもって面白くない。むしろ苦行である。これは本当に自分を支える「幸せ筋」が弱っているからである。

だが、動く度に悪夢から覚めていく実感がある。行動の度に感じる不愉快さや苦痛は、以前蓋をして感じることをやめてしまった、あるいは逃げ回ってきた自分の感情である。それを現在の行動によって追体験し味わうことで、忌み嫌い否定してきた感情エネルギーを昇華させていくのである。

ネガティブな自分を感情ごと無条件で受け容れ、肯定し、そしてその度に本来の自分を強めていく。これは本当に地道な作業である。自己啓発セミナーのように「一瞬で自分を変える」ことは出来ない。が、確実に一歩一歩、「本来の自分を強める」ことは出来る。この小さな積み重ねが「幸せ筋」を強め、やがて人生に大きな変化をもたらすのだ。

着実な一歩の積み重ねが人生を変える