家族

一人でいることが一番安心出来た時期もあった。
何もしない時間が安らぎの時もあった。
誰にも邪魔されない時間と空間を確保することが、人生において何よりも重要だった。
故に、家族とは僕にとって、僕の安心安全領域を土足で脅かす侵略者(インベーダー)だった。家族だから、というだけでどれだけ高い城壁を築いても易々と突破してくる。実に許し難い存在たちだった。

しかし今は、彼女と二人の時間、家族との時間がなくてはならないものとなっている。自分一人で何かをするということが、とてもつまらなく思える。真逆もいいところだが、これが真実だ。
僕には趣味がいくつかあった。音楽を聴く。カラオケで歌う。テレビを見る。プラモデルを作る。ドライブをする。お酒を飲む。全て一人だけで完結する趣味ばかりだった。それら趣味の時間は絶対的に死守してきた。
今やそれらに充てる時間はゼロである。家族のために自分の趣味を犠牲にしたわけではない。やりたいことが根こそぎ変わってしまったのだ。

音楽を聴くことはほとんど無くなった。カラオケは家族で楽しむものに。しかも自分は聴く側である。テレビは家族団らんのツールとなり、家族で映画館にも足を運ぶようになった。プラモデルは当面作る時間はないだろう。ドライブも絶対に家族と出かける。お酒も一人で飲むのではなく、家族と一緒の時に楽しむものになった。一から十まで全部変わってしまった。

それほどに、僕にとっての家族はかけがえの無い宝だ。惜しみなく自分の全てを与えられる存在だ。家族との時間は何にも増して重要だ。一人きりになるなんて、風呂とトイレに行く時くらいではないだろうか。それだけ家族とともに過ごすことは僕にとって当たり前になった。

そして、いかに家族との時間を充実させていくか、といったことが人生の主たるテーマとなった。自己探求だとか人生の目的とか、まるでどうでもよくなってしまった。全ては家族の中にあるからだ。

家族